コピーライターの裏ポケット

こちらのブログは
「コピーライターの左ポケット」の
原稿と音声のアーカイブです




2014年02月23日

上田浩和 2014年2月23日放送

ueda1402.jpg

わたしにも分からないんです。

             上田浩和

銃声がぱんぱんぱんって3回したんですよ。
そしたらパンが三つあったんです。そこに。
メロンパン、あんぱん、クリームパンの順番で。右から。
いや、あんぱん、クリームパン、メロンパンの順だったかな。
どっちでもいいんですけど。
クリームパンから食べたんですけど、
おいしかったですねえ。クリームの味がして。
あんぱんはあんの味がして、
メロンパンはメロンパンの味はしたんですけど、
メロンの味とはちょっと違うと思いました。
ちょうどヤマザキ春のパンまつりが始まった時期だったから、
デニッシュボウルもらえたんですけど、
その皿で食べたものはなにかといえば、
シチューなんですよ。パンじゃなかったんですよ。
なんだか夫に抱かれながら、
昔の恋人のこと思い出してるような背徳感から、
ヤマザキさんごめんなさいごめんなさいって、
メッカの方にむかって土下座してたら、
そこに銃声を聞きつけたという警察官が
自転車にのって現れたんです。メッカの方から。
「いま銃声が聞こえませんでしたか」とたずねる警察官が、
わたしには神様が警察官の格好をして
怒鳴り込んできたように見えて、答える前に逃げ出したんです。
逃げられたら追いかけたくなるものですよね。
それはカレーパンのカレーが辛いのと同じくらい明確なことです。
ぼくはあっさり捕まえられました。
捕まえられると抵抗したくなるのが人ですよね。
それはチョコチップメロンパンのチョコチップが甘いのと
同じくらい明確なことです。
わたしは隙をついて警察官の腰から拳銃を奪いました。
そしてなんでか知らないけど、
それで自分のこめかみを打ち抜きました。
たぶん神様に捕まるくらいなら死んで閻魔様の前に出たほうが
まだましだと咄嗟に判断したんだと思います。
ぱん!とひとつ銃声がしました。
そしたらわたしの頭のなかにパンが一つ現れたんです。
なんのパンだか分かります?
二食パンです。
左がクリームパンで、右がチョコレートパンです。
つまり、左脳がクリームで右脳がチョコになったってわけでして、
右半身をクリームに、左半身をチョコに制御されてる気分が
どんなものか分かりますか?
いやあ、それがねえ、わたしにも分からないんです。


出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:上田浩和
posted by 裏ポケット at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 上田浩和 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月16日

細川美和子 2014年2月16日放送

hosokawa1402.jpg

ふじさん

          細川美和子

ふじさんは思っている
みんな、よく写真をとるなあと

あっちからも、こっちからも、
近くからも、遠くからも、
一日中、ひっきりなしに
だれかがふじさんにむけて
カメラをかまえている

ときどきは、高い空の上、飛行機の窓からも、
カメラをかまえているひともいる
よじよじ、のぼってきては、
ずいぶん接写して帰っていくひともいる

写真をとったみんなは、うれしそうだ
となりのだれかに見せたりしている
とおいだれかにメールしたりもしている

日本人は写真が好きだ
日本人はメールが好きだ
日本人はふじさんが大好きだ

だからふじさんは、
今日もできるだけじっと
動かないようにしている
写真にぶれてうつったりしないように
だれかに悲しい思いをさせないように


出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:細川美和子
posted by 裏ポケット at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 細川美和子 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月09日

栗田雅俊 2014年2月9日放送

pa.jpg



        栗田雅俊

「ぱ」を発見した男に著作権が与えられたのは24年前のことだった。
ぼくは過去に一度だけ、彼にインタビューをしたことがある。

「それは偶然だったのさ」と彼は言った。

「あの日、私は、くちびるを真一文字に結んでいたのさ。
まるで泣きべそを我慢する子どもみたいにさ。
そのときふと、くちびるに蚊が止まったのさ」
「蚊ですか」
「そう。蚊さ。ぼくは蚊を追い払おうと、
口の中の空気を破裂させるように息を解放したのさ。すると…」
「あの音が出たんですね?」
答えるかわりに穏やかな笑みを浮かべ、彼は言った。
「神のギフトは、予想もできない方向からやってくるのさ」。

あんなもの誰でも思いつくと人々は言った。
世紀の発明というものは、往々にしてシンプルに見える。
だが、シンプルな結果として、彼は世界有数の億万長者になった。

それ以降、「ぱ」をつかうたびに、
世界は、男に対し、莫大な著作権使用料を
支払わなければならなくなったからだ。

あるタレントは「きゃりーみゅみゅ」に改名を余儀なくされた。
昔はなんていったっけ。
気軽にその名前を呼ぶことさえ、いまは叶わない。

かつて「ぱっぱらぱー」という悪口もあった。
今その言葉を発することができるのは、富裕層の人々に限られている。
「ぱっぱらぱー」は、むしろ高貴さを表す単語として
広辞苑にものったという。

いちばん慌てたのはパチンコ業界だった。
なにしろ「ぱ」を看板として掲げるだけで、
目玉が飛び出るような額が飛んでいくのだ。
しかし彼らに「ぱ」を外す選択肢はありえなかった。
理由は言うまでもないだろう。
これをきっかけに業界は衰退の一途をたどった。

悲しいことが、ひとつだけある。
小さな子供が父親を呼ぶときでさえ、
多額の料金が発生するようになってしまったことだ。
だが、たとえそれがどんなに狂ったルールに見えようとも、
価値あるものに対価は支払われるべきだというのがぼくの考えだ。

この放送で使われた「ぱ」の数は12。
ぼくも、かなりの金額を支払わなければならないだろう。
だが価値あるものに対価は支払われるべきなのだ。


出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:栗田雅俊
posted by 裏ポケット at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 栗田雅俊 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。