コピーライターの裏ポケット

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2010年10月10日

照井晶博 10年10月10日放送

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ノウズ
        照井晶博

最近、鼻毛のびるのがやけに早いなぁ。
やっぱりタバコの本数が増えたせいなんだろうか。
それとも都会の空気がどんどん汚れているからだろうか。
彼も最初はそう思っていたらしい。
鼻毛はおそろしい速度で伸び続けた。
朝、鼻毛をカットしても、
夕方になるともう、鼻の穴からこんにちは。
……という時期はかわいいものだった。
夜、切ってから寝ても、朝起きると、鼻の穴からサルバドール・ダリ、
というシュールな毎日が繰り返されると、
彼はこの異常な鼻毛を受け入れることに決めた。
不思議なことに、鼻の穴をふさぐくらいに鼻毛がのびようとも、
彼は全く息苦しくなかったし、
それどころか彼はこの鼻毛によって、ある不思議な力を手に入れたからだ。
まず、彼は、天気の変化に敏感になった。
突然の雨が、降り出す前に分かるようになった。
自分が手に入れた力がどうやら予知能力のようなものらしく、
異常にのびた鼻毛は様々な変化を敏感に察知するセンサーのようなものらしい、
と気づくまで、そう時間はかからなかった。
彼は鼻毛の力で、株でとんでもない財産を築き、やがて恋に落ちた。
その女性は、とてつもなく美人で、
彼のような男のことなんて見向きもしないだろうと誰もが思うような人だった。
でも、彼にはわかっていた。
彼女が自分を好きになってくれることを。
彼の異常な鼻毛も、個性だとして受け入れ、愛してくれることを。
彼女は、彼が予知した通り、いや、それ以上に彼を愛してくれた。
彼はしあわせだった。
しかし、彼にはわかっていた。
このしあわせがそう長くは続かないことを。
自分がいつか、彼女に殺されてしまうということを。
だから、その前に、
自分が彼女をきっと殺してしまうということを。


出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/


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posted by 裏ポケット at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 照井晶博 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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