コピーライターの裏ポケット

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2010年10月24日

細川美和子 10年10月24日放送

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お守りこうもり
                    細川美和子


「キャー!」
夜中に部屋の窓をあけたら、
いきなりこうもりが飛びこんできて
わたしは叫び声をあげた。
いや、正確には
「ギャー!」
だったかもしれない。
いや、まだちょっとかわいくいってしまったな。
「ギャー!!!」
ぐらいだったかも。
でもみるとこうもりは、わたしに負けずおとらず、
ぶるぶるとふるえている。
なんだか少しかわいそうになって、話しかけてみた。
「お願いだから、出ていってくれない?」
するとこうもりはぶるぶるしながらこう答えた。
「どうかここにおいてください」
聞けば、こうもりなのに暗闇が苦手なんだという。
わたの部屋はいつも朝方近くまで灯りがついているから、
前々から狙っていたんだそうだ。
そう、モノを書く仕事をしているので、私はよいっぱりだ。
「ずっと憧れていたんです。
明るい光の中で、夜の闇におびえずに暮らせる生活を」
でも、明るい光の中でみるこうもりはずいぶんとかわいくない。
うーん、としぶっていると
「こうもりってね、たくさん子供をうむから
豊かな富のシンボルなんですよ。
中国ではこうもりの発音が幸福を意味する言葉と
韻がいっしょだから、縁起がいいとされているんですよ
清朝の家具や陶器なんかによく描かれていて。
ぼくなんて、ほら、生こうもりですよ。強力ですよ。
パワースポットめぐりするよりいいですよ。」
こうもりは必死でまくしたてた。
「ほんとなの、それ?」
「たしかアンアンに書いてありました」
「ふうん、そんな記事、よんだことないけど」
「ハナコだったかもしれません」
とりあえず1カ月のお試し期間、ということで
わたしはこうもりを家に住ませてあげることにした。
リビングのランプのすぐとなりに、
こうもりは今もおとなしくぶらさがってる。
ぶらさがってみると、意外とオーガニックな感じで、
わたしの部屋のロハスなインテリアになじんでて悪くない。
夜中に書いてる途中の小説を読み聞かせると
おかしな箇所に的確なコメントをくれたりして、重宝している。
「校正の才能あるわよ」
「いやあ、そんな。でも超音波センサーのおかげかもしれません。」
と、まんざらでもなさそうだ。
幸運が訪れる気配は、まだない。



出演:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/


タグ:細川美和子
posted by 裏ポケット at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 細川美和子 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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