コピーライターの裏ポケット

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2011年04月17日

細川美和子 2011年4月17日放送

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裏表のある男

              ストーリー 細川美和子
                 出演 柴草玲

笑った顔しかできない男がいました。
幼い頃から、
派手にころんだときも
学校でいじめられたときも
悲しいニュースをみたときも
やがて大人になって、
3年越しの片思いに破れたときも
飼っていたうさぎが死んだときも
希望している就職先に落ちたときも
彼の顔はいつも笑顔なのです。
そのことで彼を責める人もいました。
本気じゃない、とか、不謹慎だ、とか。
そのことで彼をほめる人もいました。
心が強い、とか、けなげだ、とか。
彼自身はどう思っていたかというと、
ただただ、不思議でした。
どうして自分は泣くことができなんだろう?
どこにその感情を置いてきたんだろう?
生まれたときからそうだったの?
責めるような口調にならないように、
気をつけて彼は母親に聞いてみました。
「そうねえ、赤ん坊の時からあなたは
ちっとも泣かない子だった。とても助かったわ。
まわりの母親にうらやましがられたわよ」
と母親はにこにこと答えました。
ふうん、だったらまあいいか、と彼は思いました。
大切な人を、一度はちゃんと、よろこばせていたのだから。
それだけで、このわけのわからない宿命にも意味はあるんだ。
彼はそう思って、ますますにっこりと笑いました。


出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/

タグ:細川美和子
posted by 裏ポケット at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 細川美和子 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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