こちらのブログは
「コピーライターの左ポケット」の
原稿と音声のアーカイブです
▼
コピーライターの裏ポケット
▲
2011年05月22日
細川美和子 2011年5月22日放送
マルゲリータの秘密
細川美和子
マルゲリータは15歳で結婚した。
マルゲリータが暮らす村の、50歳にもなる村長からの強い求婚によって。
夫を若い頃に亡くし、マルゲリータを女手ひとつで
育ててきた母親は、その申し出を喜んだ。
村長は人徳者だったし、もちろんお金も牛もたっぷり持っていた。
亡くなった妻に似ている、とその村長は言う。
亡くなった村長の妻の顔を思い浮かべて、
村のものはいっせいに首をかしげた。
が、一方で、無理もない、と、みなが口をそろえた。
マルゲリータはすれちがう牛もふりかえるぐらいの美人だったから。
でもマルゲリータは、隣村のマッケローネのことが大好きだったので、
その結婚の決定をおおいに嘆き悲しんだ。
村長に嫁いだあとも、話したこともないマッケローネの夢を
毎晩みてはしくしくと泣いた。
そして村長との間に元気な男の子が産まれたとき、
マルゲリータはびっくりした。
その顔はマッケローネさんにそっくりだったから。
ああ、自分がマッケローネのことを愛しく想いすぎたせいだ。
マルゲリータさんは、子供の顔をみては、しくしくと泣いた。
しかし、母親がつぶやいた一言でマルゲリータの涙はとまる。
「あら、お前が小さい頃、死んでしまったお父さんにそっくり。」
マッケローネにあんなにひかれたわけが、マルゲリータはやっとわかった。
それからは、マッケローネの夢も見なくなって、
子供と自分を必死になって愛してくれる村長と、しあわせに暮らした。
なんてことを、スーパーで買った
宅配ピザを食べていたら
想い浮かべてしまって、ビールをもう一杯、飲みたくなった。
いいですか、もう一杯。
出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック