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「コピーライターの左ポケット」の
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コピーライターの裏ポケット
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2011年07月24日
細川美和子 11年7月24日放送

お師匠さん
細川美和子
わたしの料理のお師匠さんは、
お母さんでもなく、お姉ちゃんでもなく、
ましてやお父さんでもなく、
仲良しのようこちゃんだった。
同じ団地に住んでいたようこちゃんとは、
どうして仲良くなったのかは思い出せないのだけど、
気がつくと屋上でこっそり捨て猫を飼ったり、
着せ替え人形の洋服を作って自慢しあったり、
おにぎりをもって川沿いを海まで
自転車で走ったりする仲になっていた。
ふたりともお母さんがパートに出ていたので、
お母さんが帰ってくるまでいつも一緒にいた。
おなかがへってしまった時は、
お母さんにはナイショだよ、と言って、
ときどきようこちゃんが料理をしてくれた。
じぶんと同い年の女の子が包丁を使いこなしたり、
フライパンを火にかけるのを見るのは衝撃的だった。
うちのお母さんに言われてもちっとも手伝わなかったのに、
わたしもやりたい!と大興奮した。
そんなわたしにようこちゃんが
はじめて教えてくれたレシピがこれ。
1、岩下の新生姜のふくろをあける。
2、新生姜をみじんぎりにする。
3、それとふくろの中のつけ汁を、ごはんとまぜる。それだけ。
うすいピンクの生姜と
白いほかほかのごはんの組み合わせは
とてもきれいでおいしくて、
わたしは何度もそれを作るようになった。
そのあとも、いろんな料理を教えてもらったけど
今でも一番作るのはそのレシピ。
疲れて帰った夜なんかに、
ようこちゃんをぼんやり思い出しながらつくる。
やっぱりおいしい。
どうしてるかなあ、ようこちゃん。
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