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コピーライターの裏ポケット
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2011年11月06日
小山佳奈 2011年11月6日放送

「誰もまっすぐになんか生きられない」
小山佳奈
天然パーマのパー子が恋をした。
天然パーマのパー子というのは
私の席の前に座ってて
文字通り天然パーマのふわふわした髪で
とんちんかんなことを言いながらケタケタと笑ってる
性格も天然、行動も天然、
全部が天然で出来ているような子だった。
そんな天然パーマのパー子が恋をした。
相手はバスケ部の1つ上の先輩で
いつも女の子たちに囲まれているような人で
パー子にまるで勝ち目があるようには思えなかったけど
それでもパー子はひるまなかった。
学園祭の日。
パー子はバスケ部がやっているメイドカフェに乗り込み
その先輩を指名し、告白し、あっさりとフラれた。
先輩にはとびきり髪のきれいな彼女がいたらしい。
そんなことくらい調べておけよ、と思ったが
天然だから仕方がない。
それからパー子は学校に来なくなった。
1週間たっても2週間たっても
パー子のふわふわした髪が
私の席の前でなびくことはなかった。
紅葉もあらかた散り落ちて
前の前の席の子からプリントを受け取るのに
うんと手を伸ばすのにも慣れた頃
パー子はひょいと姿を見せた。
そしてみんな唖然とした。
パー子は坊主になっていた。
天然パーマは、ばっさりカットされ
襟足はきれいにバリカンで整えられていた。
パー子はあまり笑わなくなった。
とんちんかんなことも言わなくなった。
天然パーマじゃなくなったパー子は
天然じゃなくなった。
いや、もともと天然なんかじゃなかったのかもしれない。
パーマネントは辞書によると、永久的って意味らしい。
永久的、天然。
そんなものあるわけない。
パー子は正しい。
ひとつだけ。
坊主になったパー子は
誰よりも美人だった。
出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
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