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2012年01月08日
中里耕平 2012年1月8日放送

岡本タオル店
中里耕平
ガガガ。ガガガ。
きょうも機械が軽快にはたらいている。
ここは岡本タオル店。
父親がタオルをつむぐ音を聞きながら、
工場兼自宅の2階でごろりと横になって
長女の夏生はぼんやり考えていた。
どうしてうちは、岡本タオル店なんだろう。
だって父親の苗字は、坂本なのだから!!
岡田さん、という小学校以来の親友と一緒に店を始めたから、
「岡田」と「坂本」で「岡本」。
そう思いこんでいた時期もある。
でも、岡田さん、岡山さん、岡さん、岡武者小路さん、岡勅使河原さん、
そういう友達はひとりもいないことが既に判明している。
ガガガ。ガガガ。
ガガガガ。がんぶらこっこ。ガガガ。
おかしい。
タオルをつくる音に混じって、
どんぶらこっこにとてもよく似た音がする。
音がする方を見ると、
そこには川があって、
大きなタオルが流れてきた。
桃の模様のタオルだ。
それを見て、坂本夏生は衝撃を受けた。
あれはなんだ。
桃タオルだ!
夏生は急いでパソコンに向かった。
桃タオルで検索!
ところが、手がこんがらがって、
TAORUがTAROUになってしまった。
そのとき、夏生はすべてを悟った。
岡本TAORU。
あの芸術家にあこがれた父親が、
タイプミスから思いついただけの商売だったとは!!
そう、なんとなく老舗っぽいと思われがちな岡本タオル店は、
じつは三か月前にオープン。
ブラインドタッチが生んだ、IT時代の申し子なのだ。
出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
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