コピーライターの裏ポケット

こちらのブログは
「コピーライターの左ポケット」の
原稿と音声のアーカイブです




2012年08月05日

小松洋支 2012年8月5日放送

koro.jpg

コロッケ

  小松洋支

元カレからメールが来た。
「ごぶさたしてます。元気ですか?
こんど結婚することになりまして。
相手は中学の同級生。
同窓会で再会、というよくあるパターンです(笑)
一応、ご報告まで。
では。」

メールを読み終わって、わたしはキッチンに立った。

まずジャガイモを固めに茹でる。
茹であがったら、皮をむいて、スプーンの背でつぶす。
つぶしすぎないこと。
玉ねぎは粗く、ザクザクきざむ。
挽き肉には濃いめの下味をつける。
小麦粉は薄めに、パン粉はたっぷりまぶす。
揚げ油はあたらしいサラダ油。
キツネ色になってきたな、と思ったら、すぐ引き上げる。
衣がカリッと厚くて、中はホクホク。
ふつうのコロッケ1個半ぶんくらいの大きさの、
わたしのコロッケ。

「コロッケには、パン」だと思うな、やっぱり。
揚げたてのコロッケにウスターソースをかけて、
食パンやマフィンにはさむ。
とんかつソースも悪くはないけれど、
ウスターソースの潔さに一票。
ザクッと音をたててコロッケパンをほおばる
あの幸せったらない。

元カレは、そもそも「コロッケには、ごはん」だった。
しかも、コロッケにも、キャベツにも、醤油をかける。
ねり辛子までつけたりする。
ときには、ごはんの上にコロッケをのせ、
その上からマヨネーズと醤油をかける。
あの邪道ぶりは、いったいなんだったんだろう。

コーラを飲みながらどら焼きを食べたり、
日本茶の湯呑みで牛乳を飲んだり、
すき焼きにトマトを入れたり、
それはまあ、いろんなことしてたけど、
中学の同級生は、きっと笑って見過ごしてくれるんだろう。

ふと思いついて、揚げたばかりのコロッケの端っこに、
醤油をたらしてかじってみた。

うーん。
・・・・ ありは、ありなんだけれど、
なにかが、「とっても違う!」って気がした。



出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:小松洋支
posted by 裏ポケット at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小松洋支 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がない ブログに表示されております。