こちらのブログは
「コピーライターの左ポケット」の
原稿と音声のアーカイブです
▼
コピーライターの裏ポケット
▲
2012年09月23日
細川美和子 2012年9月23日放送

「ぬれぎぬ」
細川美和子
またぬれぎぬを着せられた。
着せられやすい体質なのだ。
むかしから。
子供のころは、
兄や妹のやった
いたずらのぬれぎぬ。
中学生のころは、
部活の先輩のしでかした
失敗のぬれぎぬ。
大学生のころは、
寮の先輩の犯した
規律違反のぬれぎぬ。
就職してからは、
上司のやらかした
不祥事のぬれぎぬ。
気づくと着せられていて、
ぬれぎぬだよ!と脱いで
本人に返そうとしても、
いやそうな顔をしてうけとってくれない。
本人も、まわりの人も、
なにぬれぎぬ着せようとしてるの?
って顔でみてくる。
かくしてびしょびしょの
ぬれぎぬをかかえたまま、
ぼくは立ち尽くす事になる。
おとぎ話だとあわれに思った
かえるの妖精とか魔法の杖をふって
助けてくれるんだけど。
ぬれぎぬをピカピカの衣装にかえてくれて、
やさしくて聡明で美しい王女さまに
ひきあわせてくれたりするんだけど。
ぬれぎぬを着せてきた悪いやつを
ひきがえるなんかに変えてくれたりもして。
でも、今回も特にそんなことがおきる気配はない。
げろげーろ。
ぼくはあらためて思った。
少なくともぼくは、
びしょびしょの服をきて
立ち尽くしている人をみても
その人を遠まきで責めたりはしない。
ぬれた服をまずは脱がせて、
あったかいお茶でも飲みながら、
本人からゆっくり話を聞きたいと思う。
ねえ、かえるくん。
出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:細川美和子
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック