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2012年10月14日

小松洋支 2012年10月14日放送

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ご報告
小松洋支

偉大なる我らが皇帝陛下の 第一書記
ムンフトック閣下殿

皇帝陛下には、きょうもごきげん麗しく、
ポーマ=ユルギウム庭園を散策しておられることと存じます。

皇帝陛下がつくられたこの広大な庭園には
森、湖、草原、砂漠、火山や氷山、
そして小規模ながら人工の海までがあり、
全世界からありとあらゆる種類の生き物が集まって、
まさに生きた動物百科全書、
世界最大のアニマル・エキジビション、
その収容する生物の多様なことといったら、
われわれの想像をはるかに上回っております。

この皇帝陛下の大庭園の生き物リストに新たな一項目を加えるため、
珍奇な動物を探し出して捕獲する。
なんという光栄な仕事に恵まれたことかと、
わたくしは日々、天に感謝の祈りを捧げつつ
もう何年も辺境という辺境をめぐり続けているのです。

聞くところによりますと、
一昨年、サンチェポンデ氷河の上で発見し、
皇帝に献上いたしましたあの生き物が、
たいへんな人気を博しているのだとか。
それを一目見たいばっかりに、遠くの町や村から大勢が押しかけ、
あの広い庭園の入口に長い長い行列ができるほどだと伺って、
わたくしどもも苦労のし甲斐があったと、
手をとりあって喜んでいる次第です。

あの生き物は一見完全な球体をしていますが、
実はきわめて長いひも状の体を、
自ら巻きとって球を形づくっているのです。
ひもの姿を現すのは、頭を垂れて水底の餌を食べるとき。
どんなに深い水の底でも、あの長いひもの先についた頭が
届かないということはありません。

それから、プリューネラの草原で捉えたあの奇妙な生き物。
体が大小ふたつあって、大きい方は口と内臓と手足。
小さい方は、目や鼻や耳などの感覚器官と脳。
小さい体は翼を持っていて、自由に飛び回ることができる。
先般発送しましたので、そろそろ帝国に到着する頃かと思いますが、
あまりの不思議さに皇帝陛下も驚愕の眼(まなこ)を見張られることでしょう。

さて、ここしばらく「うみへび座銀河団」を探索してまいりましたが、
これといってめぼしい成果はなく、
珍奇な動物を探し求めてさらなる辺境へと足を進めようと存じます。
噂によれば、「おとめ座」付近には「天の川」と呼ばれる銀河があり、
その片隅に、小さいながら、生き物がうなるほど住んでいる惑星があるとのこと。
真偽のほどはまた後日ご報告いたしますので、ぜひぜひご期待のほどを。

皇帝陛下の僕にして
第一書記閣下の忠実なる家臣   シュラベナム・ユーリカイ


出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:小松洋支
posted by 裏ポケット at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小松洋支 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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