コピーライターの裏ポケット

こちらのブログは
「コピーライターの左ポケット」の
原稿と音声のアーカイブです




2012年12月30日

上田浩和 2012年12月30日放送

ueda.jpg

キャベツ!

            上田浩和

クリスマスプレゼントに
キャベツをあげたのがいけなかったみたいだ。
彼女がとても怒っている。
にんじんをツノにして鬼の形相だ。
キャベツは煮ても焼いても
そのままでもおいしいから喜んでくれると思ったのに、
反対に怒らせてしまった。
プレゼントにキャベツだなんて!と。
キャベツは指輪みたいに私を輝かせないし、
ドレスみたいに私を奇麗にもしてくれないじゃない!と。
ツノにしたにんじんをぽりぽりかじながら怒鳴るものだから、
オレンジの破片があたりに飛び散ってとても汚かった。
でも、彼女はまちがってると思う。
キャベツを指にはめようとするほうがおかしいし、
キャベツを着ようとするほうがどうかしてる。

ぼくはいま、
ホテルのベッドのうえでキャベツを抱いてひとり。
無理してホテルを予約したのは、
こうやって孤独を味わうためなんかじゃないのに。
仕方がないから、
キャベツにかけられていたリボンをほどくと、
一枚ずつ葉っぱをはいでいった。
いちまい。
にいまい。
さんまい。
よんまい。
ごおまい。
はいではぱりぱり、はいではぱりぱり音をたてながら食べていく。
こんなにおいしいのに。
食物繊維もたっぷりなのに。
なのになんで彼女は怒るのかな。
信じられないよ、ぼく。
怒るでしかし。ほんま怒るでしかし。
今度はぼくがにんじんをツノにするでしかし。

そんな怒りを洗い流すために、
ぼくはシャワーを浴びた。
浴室を出たあと彼女のセリフを思い出し、
ほんとうにキャベツはドレスにならないのか知りたくなり、
キャベツの葉を一枚ずつ裸の身体に貼っていった。
そして鏡の前に立った。
そして思った。
ドレスのように見えないこともないじゃないか。
それからフロントに電話して、
まな板と包丁を持ってきてもらうと今度はキャベツを千切りにした。
その束を輪にするとそこに自分の左手の薬指をとおした。
そして思った。
指輪に見えないこともないじゃないか。
キャベツのドレスを着て、キャベツの指輪をしてみて、
ぼくはようやく分かった。
キャベツは、
煮ても焼いてもそのままでもおいしいだけではなく、
着ても指輪にしてもおいしいということが。


出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:上田浩和
posted by 裏ポケット at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 上田浩和 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック