こちらのブログは
「コピーライターの左ポケット」の
原稿と音声のアーカイブです
▼
コピーライターの裏ポケット
▲
2013年11月17日
小松洋支 2013年11月17日放送
ちゅうもんの多い料理店
小松洋支
料理店を開いたんです。
でも、ただの料理店じゃないんですよ。
「ちゅうもんの多い料理店」。
たとえば壁に貼ってあるおすすめメニューを見ると
「激辛カレー」と書いてある。
一口食べるとたちまち汗がふきだすスパイシーなカレー、
を想像しますよね、ふつう。
ところが運ばれてきたカレーは、学食で出るような
黄色くて具がほとんどない、ぞんざいな代物で、
なんだこれ、と思っていると
そのカレーを運んできた店員があなたの向かいに座り、
身の上話をはじめるんです。
岡山の田舎で生まれ、中学生の頃両親が離婚、祖父に預けられる。
祖父の酒乱に耐えきれず、高校を中退して大阪に逃れ、スナックで働く。
スナックの常連客である、耳毛がぼうぼうに延びた老人に言い寄られるのがイヤで、上京。
イヤと言えば、自分の鼻の下にほくろがあるのがイヤで仕方ない。
プチ整形したいけれど、店の給料は安い。
そんな話をずーっと聴きながら、ぞんざいなカレーを食べるんです。
辛(つら)いでしょう。
そう、よく見るとメニューにちゃんとルビがふってあるんですね。
「激辛(つら)カレー」って。
それから、「ハヤシライス」。
こんどは、わりとまともなハヤシが来ます。
で、スプーンを手にして食べようとする。
するとそこへ、小学生のワルガキが5人くらい集まってきて、口々に叫ぶんです。
「あー、こいつこんなの食べてやんの」
「おーい、みんな見ろ」
「ヤッベー」
「ウッゼー」
「ダッセー」
ええ。それはやっぱり、「ハヤシ」 ライスですから。
それから、それから、「行列のできるブルーベリータルト」。
行列、確かにできてます。
店の外から、あなたのテーブルまで。
ながーい、くろーい
蟻の行列が。
それから、それから、
え?もういいよ?
だいたい、なんで「ちゅうもんの多い料理店」なんだ、ですって?
ほら、よく見てくださいよ、看板を。
小さな文字で書いてあるでしょ。
「なんだこりゃ!っちゅうもんの多い料理店」
出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:小松洋支
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック