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コピーライターの裏ポケット
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2013年11月24日
上田浩和 2013年11月24日放送
ゴム紐
上田浩和
家からいちばん近いコンビニで、
ちょっとした変化があり、今その煽りをくっている。
変化というのは、
毎週水曜発売の週刊少年マガジンを
ゴム紐で縛るようになったことで、
立ち読み防止のためだと思われる。
くった煽りというのは、
おかげで連載開始以来、長年毎週楽しみにしてきた
ボクシング漫画が読めなくなったこと。
天才ボクサーと言われる主人公の後輩が、
ライバルに負けてしまった回以降を読めていない。
いったいどうなっているのだろう。
その試合のあとには、
主人公自身の世界前哨戦が予定されていたはずだが。
どうなった。勝ったのか。負けたのか。
それともまだ続いているのか。気になる。気にはなるが、
読みたいのはその漫画だけなので、買う気までは起こらない。
ならばと思い、他のコンビニに足を運ぶのだが、
どこの週刊少年マガジンも縛りあげられている。
店によっては、雑誌全部が縛られている所もある。
棚に並んだ雑誌という雑誌が一斉に縛られている様子は異様である。何も告げられずにSMバーに
連れてこられたときのような恐ろしさがある。
遠慮して雑誌を凝視できない。
見ると辱めてしまうような申し訳なさがある。
雑誌界の体力自慢であるTARZANが身動きとれなくなっている。
ファッション誌や女性向けの雑誌にも容赦はない。
NEWSWEEKやTVブロスのような薄い雑誌まで同じゴム紐で縛るので、耐えかねて変なカタチにひしゃげていている姿は気の毒にもなる。
ぼくは毎日その家のそばのコンビニに通いながら、
ゴム紐がほどかれた週刊少年マガジンがないか確認する。
近所のガラの悪い若者が、店員の目を盗みゴム紐をとって
立ち読みしていないかと期待しているのである。
しかし、そんな週刊少年マガジンは、ない。
この辺りの若者たちは、みんな行儀がいいようだ。
ルールに縛られたままで平気なようだ。
ぼくから言わせれば、尾崎が足りないと思う。
最近の若者にとっては、バイクは盗むものではないのだろう。
校舎の窓ガラスは割るものではなく、
優しさは持ち寄るものでないように、
週刊少年マガジンのゴム紐はほどくものではないのだろう。
とはいえ、かく言うぼくも尾崎は苦手だ。
子供の頃から、世の中に対して反抗心を抱いたことがないせいか、
尾崎に共感することなく大人になってしまった。
おーい。誰か反抗心のある人がいたら、
コンビニの週刊少年マガジンのゴム紐をとってくれ。
じゃないと、いつまでたっても漫画の続きが読めないよ。
出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
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