コピーライターの裏ポケット

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原稿と音声のアーカイブです




2014年04月13日

山中貴裕 2014年4月13日放送

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父のサックス・気仙沼

        山中貴裕

気仙沼に生まれた父は、
おおきな船をつくる仕事に憧れたが、
経済的な事情であえなくその夢をあきらめた。
家は小さな農家で収入も少なく、
年の離れた小学生の弟もいたので、
父は18にして一家の大黒柱として
家計を支えねばならなかったのだ。
それはその時代、決して珍しいことではなかった。
昭和39年、地元の公立高校を卒業した父は
気仙沼の市役所に就職し、
以来42年間、定年退職するまで公務員として働き家族を守った。

雨の日も風の日も、
毎朝7時30分に家を出て市役所に行き黙々と仕事をこなし、
休みの日は休みの日で家の畑仕事や町内会の仕事を
文句も言わずにやっていた父。
酒もタバコもやらず、これといった趣味もなかった父。
家も建て替え、そのローンを返済しながら
2人の息子を育て上げたが、
その息子たちは共に気仙沼を出て東京で働いている。
おそらく、もう地元に帰ることはないだろう。

 ねえ、母さん。
 父さんの人生は、楽しかったのかな?

定年退職のその日、
父が買って帰って来たものを見て、家族は顔を見合わせた。
それは、銀色に輝くサックスだった。
音楽が趣味だったわけでは決してない。
カラオケさえ、恥ずかしがって歌ったことがなかった。
「これ、習おうと思うんだ」と言いながら
父は照れ臭そうに、まだ吹けもしないサックスを吹いた。
調子はずれの音が、ボワンと、汽笛のように響いた。

 父さんは、我慢してたのかな?
 本当はやりたい事たくさんあったのに
 ぼくら家族ために我慢してたのかな?

母は電話の向こうで、
「どうかしらね」と笑うばかりである。
あの夜以来、父がサックスを吹いている姿を、
母も見ていないと言う。


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タグ:山中貴裕
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2012年12月09日

山中貴裕 2012年12月9日放送

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おいらはコピーライター

       山中貴裕

おいらは三流コピーライター
おいらのことを誰も知らない
おいらは、へたくそコピーライター
おいらのコピーを誰も知らない

初めての仕事は家具屋のカタログ
120ページの、ぶ厚いカタログ
書いても書いても終わらない
今夜も家に帰れない

おいらは三流コピーライター
先輩ライターに怒られて
明日の朝までにコピー百本!
百本書いても、また怒られる

社員が4人のちいさな事務所
となりの席にはバツイチのおばちゃん
代理店の営業やめて
いまじゃ、しがないコピーライター

おばちゃんの話はいつも昔話
バブルの頃はサイコーだったわ
毎晩、街に繰り出して
テレビ局の男と結婚した

おいらは三流コピーライター
デザイナーにも舐められる
こんなコピーじゃデザインできない
俺のマックが、かわいそうだ

おいらは三流コピーライター
聞いてた世界と全然ちがうぞ
イトイシゲサトと全然ちがうぞ
いまさらコピーライターとか、時代遅れ?

でもね。

コピーを書くのが好きなんだ
コピーを書くのが好きなんだ
喫茶店のすみっこで
きょうもコピーをひねりだす

おいらは三流コピーライター
いつかは書くぜ会心の一行
歴史に残る名コピー

おいらは三流コピーライター
おいらの武器は鉛筆一本
いつかは独立してやるぜ

おいらは三流コピーライター
きっと誰かが見ていてくれる
おいらのコピーを読んでくれてる


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