コピーライターの裏ポケット

こちらのブログは
「コピーライターの左ポケット」の
原稿と音声のアーカイブです




2012年12月02日

井村光明 2012年12月2日放送

imura.jpg

「ロマンチックが止まらない」

        井村光明

「自分探しの旅」も、もう十数回目。
今度こそ、生きてる実感、感じたい・・・
そう思い旅に出た。


飛行機で20時間、車で12時間、そこで四輪駆動車に乗り換えると、
生き物の姿が消え、まもなく砂丘以外の風景も消えてしまう。
そして、砂丘のキツイ斜面を、ハアハアと息を切らせ、
ズブズブと足をとられながら登りきると、
足跡を埋めるサラサラという小さな音を最後に、音も消えてしまう。
砂漠は、全く音のない世界だった。

1月のサハラ砂漠は、意外にも太陽の熱は優しく、
たまに吹く風も穏やかで、目を閉じると、暖かい春の日本にいるようだ。
ただ、音だけが無い。
砂漠では、ビュービューと、砂嵐の音がするものと思っていた。
しかし実際は、風が吹いても、パウダーのような砂は音も無く動く。
そこで気づく。
僕らの知っている風の音は、草が揺れる音や、ビルの隙間が作る音にすぎない。
風に音など無いのだ。

まもなく夜になった。
砂丘から見渡す白い大地は、月に照らされてぼんやりと明るく、
そして相変わらず音が無い。
昼間と同様に音が無い。
昼間より静かにならない夜。

その時、ふと思った。
「砂嵐」って、どんな音なのだろう。
かつて、テレビやラジオの放送終了後のノイズが「砂嵐」と呼ばれていたが、
あんな音なのだろうか?
こんな物静かな砂漠が、あんな音をたてるとしたら、
それは砂漠が何かに腹を立てた時に違いない。
そうだ、あのテレビやラジオの「砂嵐」は、溢れる音に怒った砂漠からの、
「静粛に!」というメッセージだったのではなかったか。
今、世界には、「静寂」が不足してるのではないか。

見つけた!
この時僕は、砂漠での不測の事態に備え、
全世界対応のイリジウム衛星携帯電話を持っていた。
全世界へ、この「静寂」を発信しよう。
もし「静寂」を放送するラジオ局があったなら。
ダイヤルを回すと、砂嵐の後、部屋が静寂につつまれる、
そんなラジオ局があったなら。
新聞のラジオ欄に、1つだけ真っ白な番組表。
とてもロマンチックじゃないか・・・
僕がそれになろう。
砂丘に立ち上がり、自由の女神のようにイリジウムを高く掲げ、
僕は電波塔になった。


と、突然
「何してんの?!」
砂漠に日本語が轟いた。
砂丘の下から、友人があきれて見上げている。
夜の砂漠の寒さに、知らず知らず飲み過ぎて、
ロマンチックが止まらなくなっていた僕。
恥ずかしい、死んでしまいたい・・・
ん?
死んでしまいたいってことは、生きてる実感感じてる?
自分見―つけた!
僕は恥ずかしい時、感じるのか。


出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:井村光明
posted by 裏ポケット at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 井村光明 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。