コピーライターの裏ポケット

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2010年09月05日

細田高広 10年9月5日放送

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【集会の日に】

              細田高広

人間たちが「動物愛護集会」を開いたその日、別の場所で
動物たちも「人間愛護集会」を開いていました。

人間たちは言います。
人の都合で捨てられ、処分される、
そんな犬や猫があまりにかわいそうだ。
野良たちは、今日もお腹を空かせて彷徨っている。
スピーチには、割れんばかりの拍手が集まりました。
人間たちは、動物を哀れんでいるようです。

一方の動物たちは、それ以上に、人間のことを哀れんでいました。
人は自分で命を落とすらしい。
家族にすら命を奪われることがあるという。
猫や犬に生まれたら、食べ物に餓えこそすれ、
家族の愛に餓えることはないのに。
いま、地球一の弱者は人間かもしれないと、
すすり泣きながら人間愛護を訴えました。

人間たちの集会も徐々にヒートアップしていきます。
犬や猫は孤独だから、もっと愛そう。もっと大切にしよう。
人間が優しくしてあげれば、それだけで動物は幸福なのだ。
エサ代なんて、安いもんじゃないか。

奇遇なことに、動物たちもほぼ同じような話をしていました。
もっと人間を愛そう。もっと大切にしよう。
人間はなにせ孤独なのだ。動物がいちばんの家族になってあげなければ。
ぼくら猫の寝顔を見るだけで、「しあわせだ」なんて殊勝なことを言う。
泣かせるじゃないか、人間ってやつは。
といった具合に、ワンワンニャンニャン盛り上がっています。


2つの大きな愛護集会は、
日が暮れるまで続きました。

会場から少し外れた、とある駅の前で。
集会から帰る一人の男の前を、
同じく集会から帰る一匹の猫が通りかかりました。

男の脳裏には、飼い主もおらず、住むところもなく、
食べ物に餓えて泣く猫の姿が浮かびます。

一方猫の脳裏には、
家族に冷たくされ、会社というところでいじめられ、
家とは名ばかりの小屋に閉じこもる男の姿が想像されました。

なんと可愛そうな猫。

男がそっと猫の首元をなでると、
猫はとっさに甘えた声を出しました。

ニャンと可愛そうな人間。
そう思いながら。



出演:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/

タグ:細田高広
posted by 裏ポケット at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 細田高広 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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