コピーライターの裏ポケット

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2010年10月03日

永野弥生 10年10月3日放送

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カンポウヤク

              永野弥生

病気ではないから大丈夫。
医者にはそう言われたが、朝起きれない。だるい。
しばしば頭が痛い。ときどき胃が重い。

病気ではないとしても、この「病気な感じ」をなんとかしたい。
そう思った瞬間「感方薬」と書かれた看板が目に飛び込んできた。

よく見ると、いわゆる「漢方薬」とは「カン」の字が違っていた。
「感じる」の「感」だ。

もしかしたら、この「病気な感じ」に効くのかもしれない。
吸い込まれるように入ったその店で、
まず勧められたのが「とにかく元気になる」という薬だ。
それが本当なら夢のような話だが、あまりに漠然としていて、
滋養強壮剤に毛の生えた物のようにも思えたし、
値段も驚くほど高かった。

1ヵ月の給料の半分をはたいて、1ヵ月分の薬。
それではほとんど薬のために働くことになる。

その店の薬は効能の範囲が広いほど高額なようだった。
例えば「頭痛を治す薬」のように
部分的に効く薬は比較的安かったが、
頭痛薬なら近所の薬局で買った方がずっと安い。

そんな中「気持ちだけを元気にする薬」というのに
目が釘づけになった。症状を治すわけではないが、
気持ちだけは、確実に元気にしてくれるというのだ。

値段も「とにかく元気になる薬」の3分の1程度だった。
元気になるのが「気持ちだけ」と考えると高いような気もしたが、
どんなに体調が悪くても、
気持ちは確実に元気でいられると考えたら、
安い買い物のように思えた。

そして、ほとんど悩むことなく、
1ヵ月分の「気持ちだけを元気にする薬」を買った。

土瓶でコトコトと30分間煎じて飲む薬だったので、
そのために早起きをし、
薬をきちんと飲むために、決まった時間に食事をとった。

2週間ほど経ったとき、
気持ちだけを元気にするはずの薬で、頭痛も、胃も、
悩んでいたすべての症状が治っていることに気付いた。

1ヵ月が経ち、同じ薬を買おうと行ってみたら、
その店はなくなっていた。調べたところ、
毒にも薬にもならない野草を「感方薬」と称して
荒稼ぎした容疑で営業停止になったという。

だったら、あの「病気な感じ」は、なぜ消えたのか?
「感じる」の「感」で「感方薬」。
ようやくその意味がわかった気がした。 


出演:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:永野弥生
posted by 裏ポケット at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 永野弥生 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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