コピーライターの裏ポケット

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2011年01月09日

下田一志 2011年1月9日放送

2011-1shimoda.jpg

Shining Stone


             下田一志


その石は艶のある濃い血の色をしている。
さらに言えば鈍く輝いている。
人間の手の届かない所に潜む、石。
しかし、それは、ある意味、誰だって手に入れることが出来る。
何故?
何故って問われても、簡単には説明できない。
僕は、それほど博学ではない。
その石の成分の90%は、シュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムで
出来ているらしい。

ただ、僕は、その石の作り方だけは知っている。

ちょっと重いな、と思われる仕事を身の程知らずに
引き受ける。それも、ひとつだけじゃ、ダメだ。
少なくとも二つ以上。そんなハードな仕事を引き受ける。
何も書かれていない原稿用紙に向かってウンウン唸る。
何回も何回も書き直して、何回も何回もNG!を喰らう。
頭の中に出来上がった思考回路を、何回も作り直し、何回もぶち壊す。
夢の中にまで原稿用紙が登場すれば、ほぼシチュエーションは完成する。

企画全体を照らす薄明かりが、頭の中で灯り始める。
忘れないように、そこら辺りにある紙にメモする。
原稿用紙でも、ノートでも、場合によっては箸袋でも良い。
ホッと安心して少しだけアルコールを飲む。
疲れているからハードリカーだ。
出来るなら、重い雲の下で海風に吹かれながら育った大麦を
蒸留したアイリッシュ・ウイスキーが良い。

「少しだけ…」と自分に言い聞かせながら、グラスを重ねる。
そんな夜が続き、
「ダメだ! こんな企画!」と、さらに自分で自分を罵り、いじめる。

苦悩とか疲労とか、人の生き方にとって「負」のエネルギーを糧に、
その石は、少しづつ成長し、輝きを増す。
まるで「鬼武者」の主人公が敵を切り刻み、技と力を得るように。
ゾンビを打ち倒し強力な武器を手に入れる
「バイオハザード」の主人公のように。

「負」のエネルギーを喰らい尽くし、
石は、ようやく産声をあげる。
その産声は、短時間に等比級数的な勢いで大きな叫びと変化していく。
その存在感に比べれば、ゴジラは単にチンパンジー、
モスラはモンシロ蝶に見える程だ。

その石は、医学用語で「尿道結石」と言う。
僕は見た。艶のある濃い血の色の石を。
正しくは、その破片を。
衝撃波を身体に1000回も当てる手術の後に。


出演者情報:芝草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:下田一志
posted by 裏ポケット at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 下田一志 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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